魚道用・昇降式自動流量調節ゲート設備
技術開発の概要
本設備は、ダム等に設置される固定式魚道水路において、ダム水位の変化に関係なく、その流下水量を安定させることを目的とした自動ゲート設備です。
一般に階段式魚道等の固定水路は、取水部水位(ダム水位)の低下によって魚道流下水量が減少し、安定した魚の遡上が困難となります。
この問題を解決するため、「側水路方式により魚道部減少相当水量の供給を行い、魚道流下水量の安定を図る方法」が計画されましたが、これを実現するためには水位の変化に対応して自動的に通水量を調節することの出来るゲート設備の開発が必要となりました。
本技術は、球磨川中流の荒瀬ダム、並びに瀬戸石ダムにおける階段式魚道建設において、上記課題に対し九州地方整備局(八代河川国道事務所)様と共同して研究・開発した自動ゲート技術です。
球磨川・荒瀬ダム
階段式魚道(荒瀬ダム)
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魚道形式 アイスハーバ型 魚道巾 2.0m 魚道勾配 1/15 上下流水位差 約20cm 魚道全長 335m(スイッチバック方式・8回Uターン) 通水量 毎秒0.5トン(0.5㎥) 主設計対象魚 稚アユ他(ヨシノボリ等の低棲魚の対象) 完成 平成11年3月 通水開始 平成11年4月 事業主 建設省八代工事事務所(現・国土交通省 八代河川国道事務所)
側水路方式による魚道水量の安定(1)
側水路方式による魚道水量の安定(2)
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固定隔壁式水路はダム水位が計画最高水位で所定の水量を流下させるため、ダム水位が低下すると流下水量が減少します。 この減少した水量を側水路から補給することにより、魚道の流下水量を常に安定させます。
(写真は側水路補給水の合流部)
ゲート設備の概要(1)
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本ゲート設備は側水路に設置されます。
側水路の水位(=ダム水位)変化に対応して上下に昇降作動し、同水位によって定められた水量を補給水として水路下流(魚道)側に通水します。
ゲート作動力として浮力のみを利用しています。喫水移動は最大2cm程度で、これによる補給水量調節への支障はありません。
ゲート設備の概要(2)
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扉体はローラゲート形式で、上部にフロート装置を固定した構造となっています。
フロート装置に作用する浮力により、扉体は水位変化に対応した的確な昇降作動を行います。側水路には隔壁(水位境界)が設けられ、かつ隔壁を貫通した放水管が固定設置されています。
又、扉体は通水量計算により決定されたT型の開口部を有します。
扉体開口部の昇降により放水管の通水口形状を変化させ、通水量(側水路の補給水量)を調節する仕組みとなっています。
自動流量調節の仕組み
研究・実験
技術開発のポイント
本技術の開発における要点は下記の通りです。
- 安全な設備であること。
- 確実な機能性を有すること。
- (水位変化に確実に対応し、正確、かつ円滑に通水量を調節できること。
- 人為的動力・操作を必要としないこと。
(常時適切な作動を行い、停電等によって作動支障が発生しないこと。) - 耐久性に優れること。
(長期間の使用に対し確実な機能維持が出来ること。又、保守管理が容易であること。) - 低水位時においてゲート部を魚が通過可能であること。
(ダム水位が低下した時には側水路部に魚が誘導され易いため、この場合にはゲート通水部を魚が遊泳可能なものとすること。) - 設備景観に優れていること。
(側水路上部への突出部をなくし、設備のコンパクト化を図 ること。)
完成後の確認
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設備完成後の通水試験において、開発要点(開発目標)が達成されたことを確認出来ました。
又、ゲートの振動や揺動の発生がなく、安定した作動を確認しています。運用開始後、現在(平成20年)、安定した作動を行っており、支障、又問題の発生等は確認されていません。
魚道効果の確認
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通水開始後における八代河川国道事務所様による調査により、ウナギやヨシノボリ、モロコ(コイ科)、ウグイ(同)等の遡上が確認されています。(荒瀬ダム魚道)
又、稚アユの遡上も確認されています。(写真:稚アユの遡上状況/八代河川国道事務所様提供)
(荒瀬・瀬戸石ダムとも魚道観察・学習施設が設置されています。)
瀬戸石ダム
瀬戸石ダムでは魚道がトンネル方式で建設され、上部水路も暗渠方式となっており、その上部は公園として利用されています。
本ゲート設備は暗渠水路中にコンパクトに設置されています。
特許の表示
本ゲート技術に関する特許を下記に示します。
特許番号 | 発明の名称 | 特許確定日 | 特許権者 |
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第3490917号 | 階段式魚道設備 | H15.11.7 | 国土交通省九州地方整備局長 (株)協和製作所 |